【連載-42】国立ランブリング
雨降りカレー 小山伸二
雨の町で長靴はいて傘さして
大学通りを歩いて帰ろう
蛙の合唱が聞こえないのが残念だけど
色とりどりの雪洞のような花が濡れている
こんな日は
なぜだかカレーをつくりたくなるんだ
自分でつくるカレーを
なぜだか食べたくなるんだ
大急ぎでお家に帰って
玉ねぎをざくざくきざんで
油を鍋にしいて
炒めていく
少しだけ塩して
こがさないように
でも大胆にずんずん炒めていく
ひたすら水分をとばすイメージで
まるでコーヒーを焼いているみたいに
玉ねぎがどんどん色づいていく
ライト、ミディアム、ハイ
そしてフレンチ、イタリアン
深炒りコーヒーみたいに
素敵に色づいた玉ねぎ
水分もすっかりなくなって
どろどろのペーストに
ここまで来たら
カレーはできたも同然
玉ねぎペーストに
大蒜と生姜のすりおろしを混ぜいれ
魔法のパウダー四種類をふりかける
インドの香りがふわりと部屋中にひろがる
なんだかカラダが五センチだけ
浮きあがった気分
外は雨六月の雨降り
ベランダでは近所の猫が雨宿り
怪訝そうな顔して
ぼくを見ている
少しだけあいてる窓から
インドの香りがする雨に溶けこんで
おつぎは鍋にチキンブイヨン
別鍋で鶏腿肉をソテーする
皮目をばしばしに強く焼いて
鍋底についたシュックを白ワインで
洗ってから
まるごとカレー鍋に投入
こくだしのためにヨーグルトと桑の実ジャム
べちゃべちゃに熟したバナナをはんぶん
塩で味を決めて
あとは気長に弱火で煮込んでいく
炊飯器でご飯も炊こう(押し麦もいれて)
バターとローリエの葉っぱも入れて
スイッチオン
あとはソファに寝っころがって
本でも読もう
六月の休日
今ごろきみはなにしてるのかな
遠い町に住んでるきみにも
ぼくの食べさせてあげたいな
いつかきみのためにつくるカレーを
ぼくは研究してるんだ
ずっと、どんな気分のときでも
きっと、きみを明るくしてみせる
そんな魔法のラブリーカレー
きっと、いつかきみのために
つくってあげるよ
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◎国立ランブリング「創作ノオト」
6月は雨の季節。
そのわりには、雨降りが少ない6月でした。
あいかわらず、世界はいろんなことがあって大変だけど、雨降りの
休日、ぼくは、カレーをつくっています。
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【プロフィール】
小山伸二 (おやま・しんじ)
国立在住。詩人。福間塾に参加。
最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)
『きみの砦から世界は』(思潮社)
作品集
クラウドナイン cloud nine
小山伸二と清水美穂子による詩と写真のコラボユニット。
「クラウドナイン」公式FB
ページ
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
http://kunitachi.happyspot.jp/
https://www.facebook.com/kunitachi.happy.spot
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