【連載 - 36】国立ランブリング
聖夜 小山伸二
弔いのひとの列が濡れた町を通過する
夜明け前の夢
だれもが無口のまま
この世の闇を照らす
歯磨きを忘れた天使のかたわらで
からからの喉のまま
朝を迎える者に
いまはだれも声をかけることなはい
ことばの積み木が崩れたときから
数千年がすぎた伝承の書物
枯れたいっぽんの木に祈りを捧げ
家族もきえた町から
しずかな夜がやって来る
電線にとまる鳥が来るべき朝に
歌を届ける
パンをちぎり
チーズを切りわける
わたしたちの食卓
無垢の豆をころがして
ゲームをはじめる子らの
かさかさの手に手を重ねていく母さんは
カメラを持った父さんの背中に
吸いこまれていくひかりとなる
動かない画面
左手で回転させ
届かない場所にあることばが
つよい重力にひきよせられて
雨とともにこの町を濡らす
やがて魂に及ぶ物語を
今宵ここにとどめて
だれも帰って来ない旅人になる
北向きの書棚
失われた足跡も消えて
石をいくつも積み上げる
異国の旋律を駆けあがる
栄光というひかりを放つ
無人の燈台
わたしたちは飯を喰い茶を飲む
芝居がかった儀式
大学通りのイルミネーションが
どんどん雨にとけていく
にじんでとけていく
ことばの積み木が崩れたときから
伝承の書物のなか数千年が過ぎ
家族がきえた町にも
聖なる夜はやって来る
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◎国立ランブリング「創作ノオト」
今年もおしまいの月になって、クリスマスがやって来た。
いろんな居なくなったひとのことばかり、思い出される年の瀬。
せめて、聖なる夜に、救いのひかりをもとめたくなる。
まだ、生きているぼくたちに、届く形で。
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【プロフィール】
小山伸二 (おやま・しんじ)
国立在住。詩人。福間塾に参加。
最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)
『きみの砦から世界は』(思潮社)
作品集
クラウドナイン
cloud nine
小山伸二と清水美穂子による詩と写真のコラボユニット。
「クラウドナイン」公式FB
ページ
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
http://kunitachi.happyspot.jp/
https://www.facebook.com/kunitachi.happy.spot
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