【連載】WEB小説 きっびす(13) 木佐悠弛
【連載】WEB小説 きっびす(13)
『夜空をスプーンでひとすくい』 木佐悠弛 作
コンソメスープの水面に浮かんだ三日月。
スプーンでひとすくいする。そのまま口へ。
うーん、ちょっとしょっぱい。
満月の味はもう少し甘みがあったはず。丸みが欠けてしまったのかな。
その満月のたまごで作ったオムレツの見た目はばっちり。半月型にしてみた。
アンタレスのソースをたっぷりかけたら、赤が鮮やかに映える。
トロっととろける満月に、アンタレスのほどよい酸味がさわやかな後味をもたらす。
星のかけらを混ぜてこねあげたスターチップメロンパンはどうだろう。
ひと口サイズにちぎって口の中へ放り込む。
ぱちぱちとチップがはじけた。なんだっけ、こんなお菓子があったような。
あとから甘さが広がってきた。星砂糖はやっぱりいい。角のない甘さが絶妙で。
銀河のはずれにある惑星で見つけた果実をデザートに食べる。
こぶしより小さな実を半分に切ってお皿に並べた。
瑠璃色の果肉から果汁があふれている。
フルーツスプーンですくい取る。
瑠璃色の味は太古の海につつまれているような気分にさせてくれる。
夜空から抽出したコーヒーを最後に口にふくんでホッとひと息つく。
月夜、星夜の下で、これがわたしなりのちょっとした朝食の時間。
イラスト:松井香保里
<作者プロフィール>
木佐悠弛
(きさゆうし)
国立市在住
アーティスト、と名乗ってみたい、宇宙の流浪人。
フェイスブックページ
初の短編連作集
「陽気なヨウルのコンチェルト」
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お問い合わせ先
joul.concerto@gmail.com
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
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