【連載】WEB小説 きっびす(14) 木佐悠弛
【連載】WEB小説 きっびす(14)
『サザンクロスと白い闇』 木佐悠弛 作
ごちそうさまでした。
わたしは目を閉じて心の中で言う。
目を開け、夜空を見上げる。
月からの使者がはらりと舞い降りてきた。
ハットをちょいとつまみ上げ、軽く会釈をしている。
わたしもならって首を小さくこくりとさせた。
すると使者は白いテーブルクロスの端を両方の手で持った。
食器はまだ残っている。
あっ、と言うひまもないくらい、一瞬でクロスを引いてしまった。
使者はクロスをばさっと夜空へ広げた。
クロスを袋状にしはじめたとたん、この空間は真っ白になっていた。
その中に全部がつつみこまれてしまったのだ。
使者はふたたびハットを持ち上げると、白い闇の中へ姿をくらませた。
わたしはそこにあったはずの星や月のほうを見上げる。
サザンクロスの残像だけはまだあって、ぽかりと浮かび上がっている。
いまはいつだろう。
わたしは時間というものが何なのか忘れてしまいそうになっている。
イラスト:一輪
<作者プロフィール>
木佐悠弛
(きさゆうし)
国立市在住
アーティスト、と名乗ってみたい、宇宙の流浪人。
フェイスブックページ
初の短編連作集
「陽気なヨウルのコンチェルト」
赤・緑 各色100部 (1冊900円+送料)
お問い合わせ先
joul.concerto@gmail.com
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
http://happyspot.jp/
[