【連載 -43】国立ランブリング
八月の雨よ、この町を濡らせ 小山伸二
土砂降りの雨をホームから眺めている
メッセージが届いた午後
みんなの残りの時間が刻まれている
からだを通過していくものが
心でとまればいいのに
誰もが小走りになって建物のなかへ
稲妻さえ見えない空の下で
どこに居てもなにをしていても
きみのことを考えているぼくの八月
きみの感じていることだけを
感じていたい
いつのまにか一緒に歩いている
旅の途上で
これからのすべての切ないことを
苦しいことを
すべてはこの胸に
きつく抱きしめて生きていく
通り雨もやんだ旭通りからバスが帰って来た
誰かのためにとってあった悲しみに
西日がゆっくりと滲んでいく
眠る小犬たちのような悲しみが
月になって空にのぼっていく
地上に降ってくる言葉に濡れる
立ちどまる草花になる
紙のうえを歩く
見えない足跡をたどっていこう
きみと並んでビールを飲んだ店を出て
いとおしすぎて涙がにじむ
そろそろ店仕舞いのときなんだろう
あとはただ空を眺めるだけ
見えない場所の知らない時間
箱のなかにこの身を横たえよう
幾億光年にひらく闇に怯えながら
きみの肩を抱こう
迷宮の八月をぐるぐるまわる
灼熱の都会で小犬のようにあえいでいる
ぼくの夏
きみの夏
いろんなことがつぎつぎに押し寄せてくる
人生の夏
海は見えないけど白い波が見えるみたい
谷保天満宮につながる参道
国立の夏
汗をかいて水を飲みパンを齧る
ぼくたちの生きている夏
この地上の終わりのはじまりの八月
生きている夏
◎国立ランブリング「創作ノオト」
今年の夏も、いよいよ本番です。
なかなか、大変な日々ですが、ぼくの詩の旅はまだまだつづきます。
みなさんの夏が、どうぞ、素敵でありますように。
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【プロフィール】
小山伸二 (おやま・しんじ)
国立在住。詩人。福間塾に参加。
最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)
『きみの砦から世界は』(思潮社)
作品集
クラウドナイン cloud nine
小山伸二と清水美穂子による詩と写真のコラボユニット。
「クラウドナイン」公式FB
ページ
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
http://kunitachi.happyspot.jp/
https://www.facebook.com/kunitachi.happy.spot
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