連載☆今夜もしじみスープ(2)
【国立】人生は変化する 「阿修羅のごとく」4姉妹の実家のある街
年齢とともに嗜好は変化していく。
一番わかりやすいのは食べ物の好みかもしれない。
子供の頃は甘いものが好きで、
大人になるとわさびやショウガ、ミョウガなどの辛味苦味が好きになる。
私は子供の頃は、うに、いくら、うなぎが苦手だった。
今となってはその頃の自分が信じられないくらい、大好物だけれど。
同じように、読む小説も変化することに最近気がついた。
20代の頃には特別読む気にもなれず興味の湧かなかった作家の小説が突如気になる。
最近、突然ハマっているのは向田邦子。
20代の頃にはまったくぴんと来なかった作家さんなのだけれど
なぜか急に読みたくなり、手に取ったのが「思い出トランプ」。
その読後感は「舌を巻く」という表現しか思いつかない。
その短編の中に凝縮されている表現力、観察力、洞察力。
10代から20代前半の私ではとうてい理解できなかった世界を
30年という年月が人生という名の経験を積み、
どうやらこの私でも「向田ワールド」を理解できるようになったようだ。
気がつけば、彼女が客死した年齢も目の前に迫っている。
その時までに私はいったい何が残せるのだろうか。
人生の意味を少しは理解できるのだろうか。
そんな思いで手に取った「阿修羅のごとく」。
作中の4姉妹の「実家」の場所が、自分の住んでいる街で驚く。
地名が登場するたびに意味なくドキドキしてしまう。
実際、ご近所にはリアルにお友達の4姉妹も住んでいることだし。
人が出会い、立場や関係が変わり、気持ちも変わり、事件も起こる。
うれしい、たのしいだけの人生なんて存在しないわけで、
かなしみも、つらさも、くるしみも経験してこその人生。
そして、誰もが永遠に生き続けるわけではない。
それでも、日々の会話をし、食事をし、その積み重ねが人生になる。
その人生に良いも悪いもないし
長いも短いもないとは思うのだけれど。
それにしても、阿修羅...ねぇ。
女の子はきっと小さなころは誰もが夢見るお姫様だったはず。
大人になって社会人となり、その先は良妻か賢母か。
それとも阿修羅の顔を見せるのか。
それは、きっと傍らにいる男性次第ということを
どうぞ世の男性方はゆめゆめお忘れなきよう。
などと、エラそうに書いてはみたけれど
そんな私も阿修羅の顔をした数々の修羅場があったようななかったような。
それもまた、過ぎてしまえば人生の良き想い出ということで。
磯野しじみ
中央線沿線に出没する謎の主婦ブロガー。
日々のよしなしごとを気まぐれに連載予定。
国立の情報はこちらでも♪
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
[