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・くにたち本まわり 十松弘樹


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2014年09月15日(月)
【連載】くにたち本まわり(3)「帽子作家 関 民 Tami's Spirit」

[・くにたち本まわり 十松弘樹]
帽子作家 関民 Tami's Spirit
【連載】くにたち本まわりB 十松弘樹
「帽子作家 関 民 Tami's Spirit -こころが動きだすヒントー」


国立に関民(せき・たみ)という帽子作家がいた。
2010年の末に亡くなった。享年91。


50年以上に亘り、国立の地に
まるでジブリアニメに出てくるような可愛らしい帽子の工房(兼店舗)
帽子アトリエ 関民 」を持ち、
多くのお弟子さんを育てていた。
その作風は変幻自在。
オーソドックスでクラシカルなものから

「近未来」風のものまで多岐にわたった。


帽子も町の景観の一部 」が持論だったが、
街の人に言わせれば民さん自身が町の景観の一部だった。
つねにヴィヴィッドかつキュートなファッションで町を闊歩し、
みんなを楽しませる明るく優しくかわいい人だった。

帽子作家 関民 Tami's Spirit

故・山口瞳氏の旅の友・ドスト氏こと
木彫家・関頑亭先生の夫人でもあり、
山口氏の著書には
そのふくよかな体躯から命名された

「フーセン女史」としてたびたび登場する。
前回書いた「山口瞳先生文学碑除幕式」の際の
真っ赤なスーツに頭にふたつの赤い風船をつけた

奇抜なスタイルが今も目に浮かぶ。


「不良」な夫の不行跡をなじってドスト氏の頭に
飲みかけのコーヒーをぶっかけたら、
溶けきらなかった角砂糖が頭頂部にぽつんと残ったというのは、
山口文学ファンには良く知られたエピソードだ。
でも実はこれ山口先生の創作。本当は缶コーヒーだったんだって。
でも頭からぶっかけたのは本当。



国立と言う町はメディアに取り上げられやすい町ではあるが、
その中でも民さんの帽子アトリエは必ず取り上げられた。

僕が見ただけでも「ちい散歩」でも取り上げられたし
「各駅停車の旅」でも取材された。
だからお店には地井武男も来たし車だん吉も来た。
いや、阿藤快だったかもしれない。

僕も親しくさせていただいていた。
カラオケや句会でご一緒したこともたびたびあった。



ダイエットした時には(僕が)
「あなた、ずいぶん痩せてイケメンになったじゃないの」
とからかわれたし、


「わたしネ、昔、あなたのおばあさまにずいぶんかわいがってもらったのよ」


と言われたこともあった。
孫すら可愛がらなかった孤高の祖母が、
と、にわかには信じがたく「可愛がられた」は

相撲部屋のそれではないかと邪推もしたのだが、
後輩(町内の)に親切にするような心根が

あの祖母にもあったとは孫としてはうれしかった。
いずれその辺をじっくり伺おうと思ったら旅立ってしまわれた。

帽子作家 関民 Tami's Spirit

葬儀は翌2011年の2月末に中野坂上の名刹・宝仙寺で行われた。
地元の人や帽子のお弟子さん関係が大勢集まった。
民先生の帽子を着用した人がたくさんいた。
あんなに帽子率が高いお葬式は初めてだった。


葬儀委員長はその2か月後に国立市長となる佐藤ガマさん。
在野での最後の大仕事だった。
嵐山光三郎先生とお弟子さん代表が弔辞を読まれた。



当時僕は闘病中で、退院後初めての本格外出だった。
入院中に洒落で(「お洒落」じゃなくて「洒落」ね)染め上げていた
自慢の金髪もお葬式の前々日に切った。

民先生ならきっと
「あらあなた、似合うじゃない。その髪色に合う帽子はネ」
と褒めてくれたとは思うけど、やっぱりけじめと思って。
単なる自己満足。

僕はずっとターシャ・テューダーのような人だと思っていた。
ターシャが庭を造り絵や絵本を描いたように、
民さんはたくさんのステキな帽子をつくりステキな言葉の数々を遺した。



そして、そのステキな言葉を集めたステキな本がある。
前置きが長くなったが、

それをご紹介しようというのが今回の趣旨だ。
帽子作家 関民 Tami's Spirit

「帽子作家 関 民  Tami's Spirit -こころが動きだすヒントー」
という本。
著者はお弟子さんの更谷いづみさん。
発行元は更谷さんの個人レーベル「izumaqui」。1,500円(本体)



内容は民さんの帽子作品写真の数々や民さんのアルバムや評伝と、
遺された含蓄ある言葉の数々。



帽子を作った事始めが、敗戦時に大陸から命からがら脱出した際、
男に化けるために坊主にした頭を隠すため

引揚げ船の船内で父君のソフトを女性モノに改造したこと、
などというエピソードも面白い。



そして「 民言葉(たみことば) 」。
民さんが周囲に語られた含蓄ある言葉の数々の採録だ。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
出来ない、
チャンスがない、
もう若くない
そんなことばかり言う人がいるけど
それは怖がっているだけよ
それを始める時があなたの人生の中で
一番可能性があって、一番若い時なのよ    (はじめるとき)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

安心や安定って大事よ
でもね、人間って危ういものに魅かれたりするのよね
自分とズレがある「もの」や「人」のほうが記憶に残ったりするじゃない?
安心感がない方が夢中になってしまったりするじゃない?
心の平穏よりも、心のざわざわをもとめてしまうのね  
(不安定の美)

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
                
今話題の「リトル・ミィ語録」のフェイクなどよりず っといいでしょ。
この他にも身近に謦咳に接したお弟子さんならではの

ステキな言葉が宝石箱のようにたくさん詰まっている。

民先生、本当に人を育ててこられたのだなぁとおもう。
この本はその結実、実に贅沢な本だ。


この本が生まれた経緯がまた面白い。
そうまさに「贅沢」から生まれた本なのだ。
森永乳業に「贅沢倶楽部」というシリーズがある。
イチゴ牛乳とかバナナミルクとかを高級な材料で作った飲料だ。
そのキャンペーン「総額1000万 贅沢妄想コンテスト」というのがあった。
応募者が個人ではなかなか叶えることの出来ない贅沢な妄想をプレゼンし、
審査を通ると森永乳業がスポンサーとなって叶えてくれるというもの。



「パリでバレエを踊りたい」とか
「離島の少年バスケチームを豪州遠征に連れて行きたい」とか
ユニークな夢というか妄想と言うかが実現されている。



著者の更谷さんはそのコンテストに
「90歳を超えた老帽子作家の言葉を本の形にして出版したい」

というプランで応募し、厳しい審査をみごと通過した。


本作りも最終段階に入ったところで
民さんが亡くなってしまったのは実に残念なことだったが、
遺言ともいうべき本の誕生は地元の民さんのファンとしてはありがたい。

出版されて3年が経つが、幸いなことに
国立の町はさすがご当地でこの本を手に入れやすい。
増田書店にもあるし、もちろん「アトリエ関」にもある。

帽子作家 関民 Tami's Spirit
「アトリエ関」。


「帽子アトリエ 関民」は民さんの没後ずっとクローズしていたが、
この春、遺族やお弟子さんたちによって、佇まいもそのままによみがえった。
その名も「アトリエ関」。

詳細は 公式サイトのリンク先 をご覧いただきたいが、
定期的にオープンしている。
ハンドメイドの帽子や小物のお店で、この本も置いている。
いつも前を通るだけだった方も、アトリエの中に入るチャンス。
本を買いがてら、国立の隠れた名所を訪ねてみるというのはいかがであろうか。



※遠方の方は「izumaqui」でも購入できます (えーっと、アマゾンでも買えます)。



izumaqui
http://www.izumaqui.com/
アトリエ関
http://atelierseki.jimdo.com/



【著者紹介】
十松弘樹 ==とまつひろき。
JPIC認定読書アドバイザー。
「書評のメルマガ」書評委員。
出版取次大手トーハンに勤続すること29年。
「新刊ニュース」「月刊書店経営」編集担当、
「人文図書目録」「歴史書目録」「国語国文学図書目録」等
各目録刊行会事務局担当などを経て独立。

国立駅前で「ギャラリービブリオ」
http://www.gbiblio.jp/ を経営。
国立駅前在住三代目。
12年目に入った毎日更新のブログ
「蕃茄庵日録」
http://d.hatena.ne.jp/banka-an/
は国立の老舗ブログのひとつ




≪過去記事≫
2011.5.26  「帽子作家 関 民 Tami's Spirit −こころが動きだすヒント−」




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