【連載-46】国立ランブリング
さようなら
小山伸二
ずたぶくろのような影がかさなっている
饐えた臭いも
しょせんだれもが管と皮とそして骨
ながい物語の川をながれる
きみとぼくじゃないか
灰色の空から降ってくるのは
十一月のひかりと
ことばにならないきれぎれの
思い出だとして
なにを話すのかが問われている
戦わない冬が
待っているんだ
国境を越えてこの町に
ようこそ甲州街道の北の林をぬけて
かつてここが村だったころを
町の図書館でぼくらは知ってる
電車も走っていなかったころ
きれぎれのことばが枯葉とじゃれあって
秋を見送った大通りで
映画の中の世界から
ゆっくりと帰ってきたひとたちと
とびっきり苦い一杯を飲もう
だれもが正気をよそおう夜と朝を
数えながら
弱虫の教授と強気の学生
はやくキャンパスから出ておいでよ
うらの三浦さんがあたたかいスープを作ったって
公園にならんでいるひとたちを呼んで
垣根をまがって食べにおいで
いじわるな神さまが通り過ぎてしまう
祭りが町をおおってしまうまえに
◎国立ランブリング「創作ノオト」
またもや十一月が通り過ぎて。
やがて、過越の祭もやって来る。
世界は、この町は、これからどこへ、行くのだろうか。
パンでも齧りながら、あたたかいスープを飲んで、さあ歩き出そう。
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【プロフィール】
小山伸二 (おやま・しんじ)
国立在住。詩人。福間塾に参加。
最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)
『きみの砦から世界は』(思潮社)
作品集
クラウドナイン
cloud nine
小山伸二と清水美穂子による詩と写真のコラボユニット。
「
クラウドナイン」公式FB
ページ
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット
http://kunitachi.happyspot.jp/
https://www.facebook.com/kunitachi.happy.spot
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