私にとって
最初の先生は
ほかでもない父でした
小学校2年のときのことでした
家の近くに
日本で二番目に大きな前方後円墳である
応神天皇陵がありました
宮内庁の管轄で
鉄条網で囲われていました
入ってはいけないといわれると
入りたくなるのが子どもです
友だちと私の3人は
鉄条網を超えてあれこれと探検していると
お堀にボートが浮かんでいるのを発見しました
ちゃんとオールもついています
これは乗らない手はないと
お堀のまん中あたりまで進むと
宮内庁のお役人に見つかってしまいました
当然のことですが
詰所で2時間たっぷりしぼられました
体罰ではありません
延々とお説教されたので
解放された頃は外は真っ暗でした
疲れ切って家に帰ると
連絡もなしに帰ってこない息子を
心配していた母からも
ものすごい雷を落とされました
ところが生意気で
幼児的万能感がいっぱいの私は
「宮内庁のおっさんに絞られたんで
疲れきっているから
今日は勘弁してくれ!」
と言い放ち
母を唖然とさせたのです
翌日学校で
私たち3人は
校長室に呼び出されました
他の2人はうなだれて反省の呈ですが
私は母をあきれさせた経験があるので
「校長先生
ぼくがやったことは悪いことですが
昨日すでに宮内庁のお役人に叱られて
その罰は済んでいると思っています
そもそも校長先生と応神天皇さんとは
何の関係もないので
今日あらためて校長先生に謝る意味が
ぼくにはさっぱりわかりません」
と言ってのけたのです
その日のうちに
母が呼び出されたことは言うまでもありません
その夜
仕事から帰ってきた父に
母がことの顛末を報告すると
父は
「まぁ一応お前の言っていることは
筋が通っているので
改めて怒りはせん
でも世の中をわたっていく上では
悪くなくても頭を下げておいた方がエエこともあるぞ
頭下げるのはただやしな」
といったようなことを言って
お咎めなしでした
このやり取りで
この父のように生きたいものだ
と改めて尊敬しなおした私なのでした
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