D君はだいたいいつも
30分〜1時間遅刻します
ひどいときは
2時間以上も遅刻するのです
毎回約束するのですが
その通りに来たことは
最初の何回かだけで
残りの2年間は
ずーっと遅刻です
約束の時間が過ぎたら
私の方から家に電話するのですが
家にいないことも多いです
今日は電話をかけたら
家にいました
「約束の5時だけど
何かあった?」
「いえ別にないのですが
もう5時ですネェ」
「そうだね
どうする」
「6時半には行きます」
そう言って6時40分頃
教室に来ました
D君がいつもより
神妙な顔をしていたので
ちょっとしっかり話すことにしました
「今日は10分遅刻だね」
「そうですね」
「二度目の約束だけどね」
「はい」
「寝てた?」
「いいえ
なんとなくボーっとしてました」
「そう」
「先生怒ってます?」
「どうして」
「いつも遅刻するので」
「D君は
いつも遅刻すると思っているから
腹は立たないし
心配もしないよ」
「でも
必ず電話しますよね?」
「それは
万が一だとしても
約束どおり家を出て
途中で交通事故にあってかもしれないから
一応確かめるだけ」
「それだけですか?」
「それだけ」
「そうですかぁ…」
「もちろん
ちゃんと約束を守れるD君の方が
ぼくは楽だけど
まぁまだ子どもなんだから
すぐに立派にならなくてもいいよ」
「でも大人になったらまずいですよね」
「いやいや
大人でも遅刻する人もいるし
すっぽかす人もいるよ」
「でもそれでは仕事はできないですよね」
「仕事の場合はお金がからむから
遅刻しないほうがいいに決まってるけど
どうしても遅刻することはあるし
仕事じゃなくても
いまは携帯もあるんだから
遅刻しそうになった時に
すぐに連絡すればいいと思うよ」
「でも今日もぼくじゃなくて
先生から電話もらいましたから
やっぱりだめですね」
「だめだと思ってるんだ」
「そりゃそうですよ」
「ホントに?」
「ホントに」
「じゃあ
次は必ず来られる時間を約束しない?
冬休みだからチャンスだよ」
「では5時半に来ます」
「ウワッ
それは楽しみだ」
「先生…」
「なに?」
「また遅刻すると思っているでしょ」
「それはD君が決めることでしょ
ぼくはどっちでもいいよ
でも遅刻しそうになったら
すぐに電話してね」
「はい」
「まぁ電話しなくても
時間になっても来なかったら
ぼくが電話するから
忘れてもいいけどね」
「忘れませんよ」
なんだかワクワクしてきました
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